請求書の確認をAIに任せた話:どこまで任せて、どこを人に残したか
毎月はじめの請求書の確認を、当社はAIとプログラムに分担させています。読み取りはAI、突き合わせは計算、最後の判断は人。約7か月の運用で決まってきた線引きを、つまずきも含めてご紹介します。
当社(GeneL)では、毎月はじめの請求書の確認を、AIと小さなプログラムの組み合わせで回しています。業務をお願いしている方々から届く請求書のPDFを読み取り、集計表へ書き写し、作業の記録と突き合わせて、不備があれば「要確認」として人に回す、という流れです。
以前は、担当者がPDFを1枚ずつ開いて、書き写しと照合を手で行っていました。社内の概算で、月に約5時間かかっていた作業です。
この記事では、2026年3月に作り始めてからの約7か月で、何をAIに任せ、何を人に残したのかを、途中のつまずきも含めて書きます。
最初は、AIを使っていなかった
意外に思われるかもしれませんが、2026年3月の最初の版では、AIを使っていませんでした。請求書のPDFから文字を取り出し、「今月、誰の請求書が届いているか」と、その内容を表にまとめるプログラムから始めています。
その3日後には、作業の記録と稼働時間を突き合わせる処理と、結果をチャットで知らせる処理を加えました。請求書の確認は、お金に直結する仕事です。まずは、決まった手順で確実にできるところから形にし、動きを見ながら範囲を広げていきました。
AIの出番が来たのは、その後です。4月には、請求書の読み取りにAIを使うようにし、品目を見て各チームの管理表へ金額を書き写す作業も加えました。5月には、どのチームの表に入れるかの判定もAIに任せています。
AIに任せたのは「読む」と「振り分ける」
いまの分担は、おおよそ次のとおりです。
- AIが行うこと:請求書PDFから、請求元・品目・金額などの項目を読み取る。品目の書き方の揺れを吸収して、どのチームの表に入れるかを判定する
- プログラムが行うこと:請求書の金額と、作業の記録から出した金額の突き合わせ。稼働時間の差の計算。提出状況の一覧
- 人が行うこと:「要確認」になった請求書の確認と、支払いに関わる最終判断
ポイントは、金額の照合をAIにさせていないことです。照合の結果は集計表の数式で出しています。足し算や突き合わせは、毎回同じ答えが出るべきものなので、計算の得意な仕組みに任せています(この考え方は「AIは数字を作らない」で詳しく書きました)。
AIの振り分けにも、ひとつ工夫があります。AIには判定と一緒に「どのくらい自信があるか」を答えさせ、自信が75%に届かないものは、表の隣に注意書きを残して人に見てもらうようにしています。
つまずき:AIは、もっともらしく間違える
運用を始めてから、うまくいかなかったことも何度かありました。代表的なものを2つ紹介します。
振り分けが、静かに間違っていた
2026年5月分の処理で、デザイン関係の品目の一部が、本来とは別のチームの管理表に振り分けられていました。その結果、その表にいるはずのない人の行が追加されていました。
AIは表記の揺れに強い一方で、境目のあいまいな品目ほど「それらしい」答えを出してしまいます。AIへの指示を見直し、どの表に入れるかの条件をはっきり書き直して直しました。
管理部の確認で、3つの漏れが見つかった
2026年7月分の結果には、社内の管理部から3つの指摘をもらいました。
- ファイル名の月の書き方が人によって違い、一覧から漏れていた人がいた
- 作業の記録の形式が人によって違い、稼働時間のずれを見つけられていなかった
- 金額を手で直しても、照合の結果が「問題なし」のまま変わらなかった
どれも、人が結果を見ていたから見つかったものです。ファイル名の揺れを許容する、記録の合計欄を複数の形式から探す、照合の結果を数式にして手で直しても追従させる、という形で直しました。あわせて、名簿と突き合わせて一覧から漏れている人を知らせる仕組みと、ファイル名の決まりから外れている人へ正しい付け方を個別に案内する仕組みも足しています。
線引きの考え方:確認を「なくす」のではなく「絞る」
7か月の運用で、当社の線引きは次の3つに落ち着いてきました。
- AIに任せる:読む・分類する・下書きする。間違えても、後で人が気づける場所
- プログラムに任せる:計算する・突き合わせる。毎回同じ答えが出るべき場所
- 人に残す:「要確認」の判断、支払いの最終確認、決まりそのものを変える判断
大事なのは、人の確認をなくすことではなく、人が見るべき場所を絞ることだと考えています。全件を1枚ずつ見る代わりに、「要確認」と自信の低いものだけを見る。そのぶん、見る目は細かくできます。
なお、導入後の作業時間は、まだ以前と同じ基準で測れていません。そのため、ここでは「何時間減った」という数字は書きません。御社の業務でご一緒する際は、着手前に今かかっている時間を一緒に記録し、同じ基準で比べます。
この記事は、当社の業務システムの変更記録(2026年3月〜10月)をもとに書いています。以前の作業時間は社内の概算です。当社での運用例であり、社外への導入実績ではありません。
